法灯を引き継ぐ
先日、福井県の浄土真宗御寺院様が法人解散されることとなりました。
そして長い歴史を刻んできた御本堂内の御仏具を引き取る機会をいただきました。御仏具はどれも立派で、年月を重ねた風格があり、かつての願いと共に大切にされてきた様子が伝わってきました。このような貴重な御仏具を新しい場所で活用できるように、部分修復を施すことにしました。
ご修復後、千葉県の御寺院様に御仏具をお納めする運びとなりました。御仏具の中には御宮殿や御須弥壇といった御荘厳の中心となる重要なお仏具が含まれており、これらが受入先の本堂にぴったりと納まるかが大きな課題でした。特に、御宮殿と御須弥壇の総丈や幅が現在の本堂の天井高さと合わない可能性があり、納品前から心配の種となっていました。
そこで、現地の御寺院様のご門徒大工さんの協力を得て天井を上げるという大掛かりな作業を実施することになりました。大工さんは状況を的確に判断し、丁寧かつ迅速に作業を進めてくださいました。その結果、見事に御仏具が納まり、まるでこの本堂のために作られたかのような美しい調和を見せることができました。
天井を上げるという決断は簡単ではありませんでしたが、その分、御仏具が本来の輝きを取り戻し、新しい空間でその存在感を発揮する姿を目にしたとき、心からの達成感を覚えました。また、受入御寺院様のご住職やご門徒の皆様も、ご修復された御仏具がぴったりと納まる様子をご覧になり、大変喜んでくださいました。その笑顔や感謝の言葉は、私たちにとって何よりの励みとなりました。

このように、古き良きものをただ引き取るだけではなく、適切な修復を施し、次の場所で新たな命を吹き込むことができた今回の経験は、仏具に込められた願いや歴史を未来へ繋げる重要性を再認識する機会でもありました。御仏具は単なる道具ではなく、多くの人々の信仰や思いが込められたものであり、それらを大切に扱うことが私たちの使命であると改めて感じています。
今回の経験を通じて感じたことは、仏具や御寺院様に関わる仕事は単なる物理的な作業ではなく、人と人、そして場所と場所を繋ぐ架け橋のような存在であるということです。新しい場所で御仏具が再び活躍し、多くの方々の心に寄り添う姿を想像すると、今後もこの仕事を通じて社会に貢献したいという思いがさらに強くなりました。受入先のご住職様からはこの法灯を大切に引き継がせていただきます。というお言葉がなによりだと感じさせていただきました。

最後に、今回の作業にご協力いただいた大工さん、現地のご住職や関係者の皆様、そして御仏具をお譲りいただいた福井県の御寺院様に心から感謝申し上げます。このご縁を大切にし、引き続き御仏具の修復や御荘厳の仕事に真摯に取り組んでまいります。
